第130章 恋人

カルはもう怒りを爆発させなかった。ただ静かにそこへ座り、背筋だけは真っすぐ伸びている。だが、あの余裕は跡形もない。

暗号化電話を取り上げ、直属の上司――ヴェランド・グループの執行取締役へ発信した。

コールがつながる。返ってきた声は丁寧で、どこまでも距離があった。

「カル。黒崎グループの件は、取締役会ですでに把握している。君の行動は、当社の事業倫理から著しく逸脱している」

「支援が必要なんだ。もう少しだけ時間を――」

「もう与えられない、カル」

相手は冷たく遮った。

「ヴェランドは責任ある企業だ。患者の命を危険にさらす行為は、一切容認しない。今日から休職だ。期間は――無期限」

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