第142章 万全の策

桜井智也は背筋を伸ばして端正に座っていた。けれど、血の気の引いた顔色が胸の内の煩悶を隠しきれない。

目の前の茶には、指一本触れない。

「……おじさん、言いたいことがあるなら、回りくどいのはやめてくれ」

「いいね。話が早い」

黒崎明信はふっと笑い、ゆったりとした本革のチェアへ深く身を沈めた。

「賢い人間と取引するのは好きだ。桜井グループの穴――俺が塞いでやる。塞ぐだけじゃない。半年で時価総額を倍にしてやってもいい」

桜井智也のまぶたが、ぴくりと跳ねる。

甘すぎる。熱すぎる。手にした瞬間、火傷する類の誘惑だ。

「……条件は?」

「『覚醒プロジェクト』だ」

黒崎明信の指先が、机...

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