第143章 一芝居を演じる

結城南は苛立たしげに手をひらひらと振った。

「分かったから、早くして」

吉田さんは腰を低くして何度も頷き、病室へ入ってくると、窓辺の観葉植物のところへ回り込んだ。

動きはどこかぎこちない。なのに視線だけは抑えきれないのか、桜井結衣とベッドのほうへ、ちらちらと流れる。

桜井結衣は吉田さんを見もしない。意識は手元の作業だけに落ちていた。

黒崎理人のふくらはぎ。筋肉のラインは美しく、締まりがあって滑らかだ。

淡々と揉みほぐしながら、結衣は胸の奥で冷笑する。

――演技。続けてみなさい。

吉田さんは葉を二枚拭いたところで、部屋の中へ素早く視線を走らせる。置き場所にちょうどいい“角”を探...

ログインして続きを読む