第153章

「――実験群では、局所的にNogoA受容体拮抗薬を注射したところ、脊髄損傷後14日目に神経軸索の顕著な再生性スプラウティングが確認された。その長さは対照群と比べて37.4%増加……」

それが、二人のあいだに生まれた新しい合図だった。

言葉にしないまま呼吸を合わせる、出来レースの“朗読”。

彼女は知っている――彼が聞いていることを。

彼も知っている――彼女がそれを知っていることを。

半分ほど読んだところで、ベッドの上の人影がふっと揺れた。

心拍が跳ねたわけでも、呼吸が乱れたわけでもない。

黒崎理人の眉が、わずかに寄る。喉仏が一度、上下した。

桜井結衣の声がぷつりと途切れた。

...

ログインして続きを読む