第155章 今は、判断の時ではない

黒崎理人は眉間に深い皺を刻み、耐えがたい痛みに堪えているようだった。

手首を掴む力が、時間とともに少しずつ緩んでいく。あれほど灼けるようだった熱も引き、代わりに指先まで冷たさが滲んできた。

その冷えに、桜井結衣の胸の奥がちくりと刺された。

「わかった」

「何がわかったんだ。病室にいろ。どこにも行くな。俺からの連絡を待て!」

「うん」

桜井結衣は短く答え、男が出ていく背中を見送った。

病室は、また静寂に沈む。

――けれど、結城南はまだ、あの亡命者みたいな連中の手の中だ。

一分遅れれば、一分ぶんだけ最悪の目が増える。

桜井結衣は、友だちの命を他人の手に預けることに慣れていない...

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