第160章 私たちは待てばいいだけだ

「……未熟な思いつきよ」

桜井結衣は肩に掛けていたバックパックから、同じ紙質と同じ筆致で用意した偽造原稿を数部取り出し、先ほどの原稿とすり替えた。

「これは……」結城南が、新しい束を見つめる。

「餌よ」桜井結衣はそのうち一部を差し出した。「見て」

結城南は恐る恐る受け取り、ページを開く。

中身も同じく難解で、数式と図表は几帳面に整えられている。

しばらく目を走らせた結城南は眉をひそめた。

「この式の導出……三段目で、論理の落とし穴がある。ここから先の筋で進めると、結論だけ見れば整ってるように見えるけど、モデルの基盤が極端に不安定になる。外部変数がほんの少し介入しただけで、一瞬で...

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