第172章 あの男と瓜二つ

三十六時間近く張り詰めた集中は、さすがに神経を摩耗させていた。けれど――彼女の眼差しだけは、異様なほど冴え渡っている。

やった。

致命的な罠だったものを、完璧な鍵へと反転させる。

それを、桜井結衣は成し遂げた。

一カ月後――ジュネーブ。

国際医学界が誇る最高峰の栄誉のひとつ、『ガレヌス賞』授賞式が、星屑みたいな照明に彩られたレマン大劇場で華やかに開かれていた。

結城南はオートクチュールのドレスに身を包み、興奮で頬を紅潮させながら、桜井結衣の耳元へこっそり顔を寄せる。

「やば……左の三列目、あの白ひげのおじいちゃん、グローバル賞のロバート教授だよ? その隣、ファイザーのチーフサイ...

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