第180章 恋をしたみたいだ

「今日は何の日?」桜井結衣は視線をスクリーンから外さないまま言った。

黒崎理人が彼女の手元に炊盅を置き、蓋を取る。ふわり、と濃厚で奥行きのある香りが一気に広がった。

「キッチンで3時間、つきっきりで煮てた。火加減はちょうどいいはずだ」

桜井結衣の指が、キーボードの上でぴたりと止まる。

横目で、その盅を見た。

澄んだスープ。ほろほろに崩れる鳩肉。天麻と枸杞が数枚、静かに浮いている。

視線を上げると、黒崎理人は実験台にもたれ、余裕の表情でこちらを眺めていた。桃花眼の奥に細かな光が揺れ、口元にはいつもの薄い笑み。

「黒崎グループの次男が、いつから養生レシピを研究するようになったの」

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