第30章 眠ってこそ解毒できる

もう片方の腕が鉄の鉤みたいに彼女の腰へ回り、そのままぐいっと引き寄せた。

桜井結衣の体は、扉の裏の影へ押し込められる。

背中に密着してくるのは、背の高い男の熱い胸板。

雪のように冷ややかなシダーの香りと、夜風の匂い。そこに微かな血臭が混じって、いっそ乱暴に肺を満たす。

この匂い……。

桜井結衣の瞳孔が、きゅっと縮んだ。

黒崎祁。

「動くな」

耳元で落とされる低い声。灼ける息が耳朶を撫で、ぞくりと小さな震えが背筋を走る。

扉の外では、黒崎明信が手下を連れてもう廊下を駆け抜け、部屋の前まで押し寄せてきていた。

「どこ行った! 今、黒い影がここに入ったのが見えたんだ!」

「明...

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