第50章 彼女に忘れられた細部

桜井結衣は顔を洗い、ソファの脇へ戻ると、もう一度ノートパソコンを開いた。

黒崎邸の中央セキュリティシステムはすでに突破済み。電源系統は市の電網から独立しており、予備電源は三系統。

通常の停電なら、バックアップの立ち上がり遅延は最長でも三分。

今、彼女がやるべきことは――誰にも気づかれないまま、その遅延を十五分まで引き伸ばすことだった。

結衣は隠しパーティションを開き、自作ソフトの画面を呼び出す。

……二十五分後。

案の定、黒崎邸は「パチン」という乾いた音とともに、すとんと闇へ沈んだ。

主寝室には、ノートパソコンの画面が放つ冷たい光以外、何もない。

ほとんど停電と同時に、階下か...

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