第51章 闇の中の鬼魅

橘敏恵は自分の腕をきつく掴んだ。停電した瞬間、脳裏をよぎったのは――人には言えない、陽の当たらない考えばかり。闇の中から何かが飛び出してきて、自分の命を取り立てに来るんじゃないか。そんな妄想が、喉の奥にへばりつく。

いまは一応、我に返っている。

それでも骨の髄まで染みついた不安は、まるで薄れなかった。

おかしい。あまりにも不自然だ。

桜井結衣というクズが戻ってきて、そう時間も経たないうちに起きた停電。

それに――桜井結衣が黒崎家へ嫁いでくる前は、こんなこと一度もなかった。

非常灯がぼんやりと点き、橘敏恵は慌ただしく騒ぐ使用人たちへ視線を走らせた。案の定、いちばん目障りな姿が見当た...

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