第52章 二者択一、君に選択の余地はない

黒崎理人の部屋は、遮光カーテンが隙間ひとつなく引かれ、庭に戻った灯りさえ締め出していた。残っているのは、混じり気のない闇だけ。

黒い影が猫みたいに音もなく窓を越え、床へ降り立つ。――物音ひとつ、しない。

黒崎明信の書斎、その奥にある隠し部屋。壁に埋め込まれた金庫の中には、狙いどおりのものがあった。長年の資金の流れを記した、裏帳簿だ。

理人は超小型カメラでページを次々と撮り、元に戻そうとして――そこで手が止まった。

最後の束だけが、綺麗に破り取られている。

肝心な部分が、ない。

誰だ――?

脳裏に浮かんだのは、桜井結衣の美しい顔。

この女は、思っていた以上に使える。

劇毒で、...

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