第64章 異常の裏には往々にして陰謀がある

桜井家の兄妹と廊下で対峙したときの、あの氷みたいに冷えて息の詰まる空気とは違う。

黒崎理人は、実に泰然としていた。

会場から数百キロ離れた場所――彼が桜井結衣のためにわざわざ買い上げた大邸宅。

広いリビングの革張りのチェアに身を沈め、肌触りのいい部屋着のまま、壁一面を取り囲む巨大スクリーンを眺めている。国際科研コンテストの中継が、複数アングルで、ほぼ遅延もなく映し出されていた。

「神の最高傑作」とまで持ち上げられたその顔に、植物状態の患者が纏うはずの虚ろさも病色も、欠片ほどもない。

画面の中では桜井美桜が、身振り手振りを交えながら熱を込めて『クイック・ブレイン』を発表していた。

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