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中村賢也はとっくに藤井翼の腹の内を見抜いていた。にもかかわらず、あくまで事務的な口調で言う。

「藤井社長。結奈さんに会いたいなら、契約書を今すぐ締結する必要があるって言えばいい。そうすれば、向こうから来ますよ」

藤井翼は冷えた表情のまま、薄い唇をわずかに動かした。

「別に、そこまで会いたいわけじゃない」

口ではそう言いながら、指先は迷いなくトーク画面を開き、新谷結奈へメッセージを打ち込む。

「契約書にサインして。明日、会社で押印が必要」

その頃、新谷結奈は祖父の二階建ての小さな別荘の門前に着いたばかりだった。けれど、藤井翼がくれた「機会」を逃すわけにはいかない。何より、きちんとお...

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