84

高坂明のデスクは出入口のすぐそばにあった。彼は腰を下ろすと、新谷結奈に向かって向かいの椅子を指し示す。

「新谷くん、座りなさい」

新谷結奈は我に返り、椅子に座った。

「ありがとうございます、先生」

その声に反応して、新谷芽衣が振り向く。

新谷結奈が落ち着き払って椅子に座っているのを見た瞬間、芽衣は思わず拳を握りしめた。

馬術大会が終わってからというもの、学校では自分が笑いものだ。しかも、かつては毎日自分の後ろに張りついて持ち上げていた連中が、今では新谷結奈を持ち上げ始めている。

――でも、結奈はまだ気づいてないはず。自分が結奈の荷物を捨てたことに。

……いや、そんなはずある?...

ログインして続きを読む