98

松本佳代は藤井翼に電話をかけた。「いつ仕事終わるの?」

ちょうど会議を終えたばかりの藤井翼が答える。「おばあちゃん、今日は出張なんだ。何かあった?」

松本佳代は「ああ」と短く返し、声を和らげた。「ううん、何でもないの。ただ、たまにはご飯でも一緒にと思ってね」

隣でそれを見ていた新谷結奈は、老婦人が孫に余計な心配をかけまいとしているのが分かり、胸の奥がきゅっとした。――自分の祖父も、いつもそうだった。何も言わず、ただ笑って、こちらを安心させる。

松本佳代は通話を切り、結奈に向き直る。「お嬢ちゃん、もう帰りなさい。うちの孫、今日は出張なんだって。私も知らなくてね」

「お家、どちらですか...

ログインして続きを読む