第54章 おじいさんが倒れた!

おじいさんに見抜かれ、私はもう躊躇わず、頷いた。「はい」

おじいさんは手を上げ、山本おじさんに合図して何かを持ってくるよう指示した。それは黄ばんだ診療記録だった。

私がそれを受け取って見た瞬間、心臓が無形の手にぎゅっと掴まれたような感覚に襲われた。

藤原和也の幼少期。

何年も心理カウンセラーに通っていた記録……

言葉を失い、顔を上げた。この事実を信じられなかった。

あんな天才肌の人が、心理科の常連だったなんて。

しばらくして、ようやく思考を取り戻した私は、唇を少し開いて「どうして……」と絞り出した。

でも考えてみれば、筋が通っていた。

生まれてすぐに母を亡くし、父親は別の女...

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