第107章

男が女にクレジットカードを渡す。それが意味することなんて、一つしかない。

篠崎アエミは自嘲気味に口元を歪めた。

「お買い物、続けてください。わたしはこれで失礼します」

彼女は榎田神也の手にある袋をひったくるように奪うと、踵を返して歩き出した。

岩田延一は意味深長な笑みを浮かべ、すぐさまその後を追う。

二人の足取りは速く、その背中はあっという間に衆人環視の中から消えていった。

中村景は目を輝かせ、両手を組んでその場に佇んでいた。完全に野次馬の体勢だ。

榎田神也は冷ややかな視線を彼に投げた後、その温度のない瞳を鈴木芽衣に向けた。

「一線を越えたな」

「え、どうしてですか?」

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