第172章

「放して、早く放してください!」

 道中ずっと抵抗を続けていた篠崎アエミは、乱暴に車内へと押し込まれた。

 頭がくらくらとして、それでもなお逃げ出そうとする彼女を、榎田神也は強引に抱き上げ、自身の膝の上に座らせた。

「大人しくしろ。さもないと、今ここで抱くぞ」

 その言葉を聞いた途端。

 篠崎アエミは驚くほど素直になった。

 泥酔した彼女は、急に借りてきた猫のように静まり返る。長い睫毛が頬に影を落とし、林檎のように赤く染まった絶世の美貌が、艶やかな色気を放っていた。

 全身から濃厚な酒の匂いを漂わせながら、彼女は榎田神也の懐に寄りかかり、すぐに深い眠りへと落ちていく。

 漆黒...

ログインして続きを読む