第178章

「……」

篠崎アエミは、はっとして振り返った。

そこには、今にも泣き出しそうな男の子の姿があった。大きな瞳は赤く充血し、実に心細げな表情を浮かべている。

彼女の心は一瞬にして解けた。身を屈め、男の子の目元を優しく拭う。

「はいはい、もう泣かないの。ボクはとってもいい子でしょう?」

「綺麗なお姉ちゃん、このお兄ちゃん、僕のこと嫌いみたいなんだ。お姉ちゃんが抱っこして連れてってよ!」

「ええ、わかったわ。そんな悲しい顔しないで」

篠崎アエミは男の子をひょいと抱き上げると、榎田神也には目もくれず、きびすを返して歩き出した。

抱き上げられた男の子は、蓮根のようにむちむちとした両腕を篠...

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