第181章

「どこへ行くつもりだ?」

榎田神也が高級車から降りてきた。

彼は篠崎アエミが手にしているスーツケースに視線をやり、目を細める。

「帰るつもりか。俺も一緒に行く」

「結構です! 優れた元カレというのは、死んだも同然であるべきです。元夫も同じこと。私と距離を置き、二度と関わらないでいただきたいですね」

篠崎アエミの表情は氷のように冷淡だったが、その双眸は怒りの炎を噴き上げているようだった。

榎田神也は愕然とした。端正な顔立ち、彫りの深い輪郭を持つ彼は、呆気にとられている時だけは妙に愛嬌がある。

だが、篠崎アエミにそれを愛でる余裕などない。

「いいですか、二度と私のことに口出ししな...

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