第187章

一人、二人と、誰もが榎田神也を見ている。

やはり幻覚ではない、現実なのだ。

篠崎アエミは少しだけ酔いが覚め、目を凝らして確認する。間違いなく、彼だった。

彼女は艶やかな唇の端を吊り上げ、手にしたグラスを軽く揺らすと、そのまま煽って一気に飲み干した。

林田涼子が手を叩いて囃し立てる。

「いいじゃん、いいじゃん! 酒量、上がったねぇ! もっと鍛えとかないと。これから大舞台が待ってるんだからさ……」

「そうですね! もっと飲んで、もっと鍛えます!」

篠崎アエミはまるで当てつけのように、立て続けに数杯の酒をあおった。

店の片隅。

榎田神也の表情は陰鬱そのものだった。グラスを握りしめ...

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