第192章

二人は前後して、ロビーのラウンジへと降りてきた。

春川監督は少しの間沈黙していたが、やがて意を決したように口を開いた。

「実は今日、君を訪ねたのは個人的な頼みがあってね。今度、うちの祖母が誕生日を迎えるんだが、着物を一着デザインしてくれないだろうか」

「それは……申し訳ありません。監督の顔を立てないわけではないのですが、オーダーが来年まで埋まっておりまして」

篠崎アエミは丁寧に、しかしきっぱりと断った。

仕方がないのだ。あまりにも人気が出すぎてしまった。

ファッションウィークが終わり、二階堂天誠が纏った衣装がトレンド入りを果たしたこと。さらに宮崎監督のドラマのプロモーション映像が...

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