第209章

ロマンチックな洋食レストラン。

優雅な音楽と、落とされた照明。

艶めかしい気配が、空気中に漂っている。

篠崎アエミは、榎田神也の優しく情熱的な瞳を見つめると、居心地の悪さを感じて視線を逸らした。

「……今日のことは感謝しています。あなたが手を回してくれたことは分かっていますから」

彼の手助けがなければ、事態はこれほどスムーズには運ばなかっただろう。

おそらく、安和家からの反撃もあったに違いない。

榎田神也の瞳に一瞬、寂寥の色が走る。彼は手を伸ばし、彼女の額にかかるほつれ髪を直そうとした。

篠崎アエミはすっと身を引いてかわす。

「わたしたち、やはり距離を置いたほうがいいと思い...

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