第218章

リビングルームにて。

安和博人は何度か口を開きかけては飲み込み、目の前で恥じらうような笑みを浮かべる妹を見つめた。

「本当に岩田延一に嫁ぐつもりか? 奴の心に別の女がいることは知っているだろう。お前が望むなら、俺がこの話を白紙に戻してやってもいいんだぞ」

「お兄様! うちはあちらと婚約を交わしているのよ! それに、たとえお兄様が私のために動いてくれたとしても、どうせ最後は政略結婚になるだけでしょう」

天野千尋は諦めきったように俯いた。

「どうせ政略結婚なら、少しでも好意を持てる相手がいいわ。少なくとも、岩田延一は私を嫌いじゃない。ただ、それ以上に篠崎アエミのことが好きなだけよ」

...

ログインして続きを読む