第226章

想喊?

そんな暇、あるわけない。

唇は容赦なく塞がれていた。

入江宝夢が引きずられていくのを、ただ見送るしかない。

その瞬間から榎田神也は、あっという間に大型の番犬へと変貌した。しょんぼりしたふりをしながら篠崎アエミの前までとぼとぼ歩み寄る。

「今回の件、俺は関係ないだろ。八つ当たりはやめてくれないか」

「わたし……」

篠崎アエミの腹の底には、行き場をなくした怒りがぐつぐつと溜まっていた。

目の前で、これ見よがしに哀れっぽい顔をしている男。

どう見ても演技なのは分かっている。分かってはいるのに、濃いクマの浮いた目許を見てしまうと、責める言葉が喉の奥で絡まって出てこない。

...

ログインして続きを読む