第239章

この奥さんは品のいい着物をまとい、首もとには大粒の真珠のネックレスを下げていた。

ひと目で分かる、高価な代物。

少なく見積もっても一千万は下らない。

篠崎アエミは優雅に微笑んだ。

「こんにちは。有何ご用ですか」

奥さんはどこか値踏みするような、それでいて好意的な色を顔に浮かべ、こくりと頷いた。

「ご挨拶が遅れましたね。わたしは安和博人と天野千尋の母です。娘は戻ったばかりで、まだ戸籍の変更が済んでいなくて。数日中には名前も変わりますわ」

――天野千尋の母親。

篠崎アエミの笑みが、ほんのわずかに薄くなる。

「安和奥さん、こんにちは」

名門の奥方というものは、どこへ行っても持ち...

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