第243章

無憂スタジオ。

天野千尋は、まるで散歩でもするみたいに、オフィスの中をぐるりと一周した。

それからソファにどさりと腰を下ろし、あくびでもしそうなほど気だるげな様子で、しかし顔には露骨な軽蔑を浮かべる。

「ねえ、信じてる? あたしがその気になれば、こんなショボいスタジオ、ほんの数分で買い取れるんだけど」

篠崎アエミは片眉をひょいと上げ、コーヒーをひと口すすった。

「それで?」

「怖くないわけ?」

「怖がったら、何か変わるの?」

視線がぶつかった瞬間、ばちっ、と空気に火花が散る。

どこまでも涼やかな顔つきの篠崎アエミを見て、天野千尋は鼻で笑った。

「あんた、あたしには勝てない...

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