第二百四十四章

ホテルの一室。

安和奥さんは、ぼんやりと自分の手を見つめていた。

安和博人が歩み寄る

「母さん、今日はちょっと、さすがにやり過ぎだよ」

「わたしは……」

顔を上げた安和奥さんの目から、音もなく涙がこぼれ落ちる。胸元をぎゅっと押さえた。

「母さん!」

博人は顔色を変えて飛びついた

「心臓が苦しいの? 病院行ったほうがいいんじゃない?」

「いいわよ」

首を横に振る

「どうしてだか、あの冷たい目を思い出すと、胸が締めつけられて……。ねえ、あれは――」

篠崎アエミを見つけた、あの日のことが脳裏をよぎる。

あのとき博人は、あの澄んだ瞳だけを頼りに

「この子こそ、妹だ」

そ...

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