第254章

 コンコンコン。

 ノックの音が響く。

 ドアが開き、天野千尋がにこにこと笑いながら入ってきた。

「お兄ちゃん、まだ起きてたの? さっき帰ってきたときに部屋の電気がついてたから、様子見に来たの」

「このところ、何をしている」

 安和博人の声音は淡々としているのに、どこか冷えた色が混じっていた。

 安和家の後継者として。

 安和博人は幼い頃から徹底的に教え込まれてきた。

 言葉をやわらげていても、身にまとった威圧感だけは隠しようがない。

 天野千尋はきょとんと目を瞬かせる。

「お兄ちゃん、どういう意味?」

「この街に残るのは、篠崎アエミと友達になりたいからだって、おまえ自...

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