第255章

オフィスの中は、煙草の煙がゆらゆらと立ちこめていた。

鬼が彫ったような精悍な顔立ちが、深く険しく眉根を寄せている。薄い唇はきつく結ばれ、全身から近寄るなとでも言いたげな気配がじわりとにじみ出ていた。

ノックの音がして、秘書が中へ入ってくる。自分の社長のあまりに荒んだ様子に目を留め、思わずため息をついた。

「榎田社長、無憂スタジオ、最近またすごく忙しいそうですよ。大きな案件、立て続けに取ってるらしくて」

「そういえば、お爺様のお誕生日がもうすぐですよね。元奥さんにも招待状、お送りしますか?」

「もう元奥さんだ」

榎田神也は、わずかにまぶたを持ち上げただけで、冷え冷えとした声を落とし...

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