第257章

アクセルをぐっと踏み込む。

エンジンが唸りを上げ、車は弦を離れた矢のように一気に飛び出していった。

篠崎アエミは知らない。

車が走り出したその瞬間を、誰かがスマートフォンでしっかりと撮影していたことを。

「クズのくせに、よくもあたしの男を横取りしてくれたわね」

写真を受け取った天野千尋の顔が、醜くゆがむ。

少し考えたあとで、彼女は電話をかけた。

「目障りなのが一人いるのよ。計画どおりにやりなさい」

ぷつりと通話が切れる。

彼はそのまま大きな窓辺に歩み寄り、外の賑やかな光景を見下ろしながら、口元に冷たい笑みを浮かべた。

「……自業自得だ」

――ハックション!

会社に着い...

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