第260章

 薄暗い廊下。

 篠崎アエミは一瞬も迷うことなく歩き去った。

 残されたのは、冷たい背中だけ。

 榎田神也の目が、底の見えない暗さを帯びる。「……とにかく、手を出した時点でおまえが悪い。それに、まだ何もはっきりしてないんだぞ」

「なっ……」

 入江宝夢はどうしても納得がいかず、なおも食い下がろうと口を開きかける。

 その腕に天野千尋がそっと絡みついた。「みんな今いっぱいいっぱいなんだから、もうやめましょ? これ以上言っても、余計にぎくしゃくするだけです」

「ふんっ」

 入江宝夢は不満げに鼻を鳴らす。

 榎田神也は疲れたように眉間を押さえ、傍らに立ち尽くしていた。

 ――眠...

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