第266章

呪いのような罵声が飛んだ。

その直後、酒瓶が勢いよく投げつけられてくる。

篠崎アエミは目をまん丸に見開いた。避けよう、そう思っているのに、体が言うことをきかない。

酒瓶が、頭上に振り下ろされる――

とっさに、ぎゅっと目を閉じた。

バンッ!

耳障りな破裂音が響く。

だが、予想していた痛みはいつまで経っても訪れない。頭の奥がふわふわと揺れるような感覚のなか、篠崎アエミはゆっくりとまぶたを持ち上げた。何かが、ぱらぱらと目の上に降りかかってくる。

そっと指先で触れてみる。

ねっとりとした感触。視界の端が真っ赤に染まっていく。

血だ。

目を見開いた彼女の前で、岩田延一が歯を食いし...

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