第273章

病室の中。

篠崎アエミが戻ってくると、篠崎おばあちゃんはほっとしたように笑って言った。

「お爺様はどう? 意識は戻った?」

「ええ。ご心配なく。向こうには看てくださる方がたくさんいますから」

篠崎アエミは笑顔を貼りつけた。顔色の揺らぎひとつ悟らせないように。

そこへ、病衣姿の岩田延一が入ってきた。

手には果物籠。穏やかな顔立ちに、場にふさわしい柔らかな笑みを乗せて。

「おばあちゃん、こんにちは。僕、となりの病室なんです。これからは病友だちですね」

おばあちゃんは思わず声を立てて笑った。

「まあまあ。なんていい男の子。とくに目がいいわ、澄んでて明るいの」

榎田神也も確かに格...

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