第290章

ワインが底をつくのが見えた。

中村景が瓶を取り上げようと手を伸ばした、その瞬間——榎田神也は先にソファへと倒れ込んだ。

……そのうち良くなるだろ。

そう思ったのも束の間、本当に泥酔だ。

もう一度電話を入れるべきか、と中村景が迷っていると、頭上に影が落ちた。

顔を上げる。

天野千尋がにこやかに立っていた。

「こんなところで会うなんて、偶然ですね。……どうしたんです? そんなに飲んで」

「別に。俺ら、仕事の話してただけだ。先に帰れ。こいつのことは俺が面倒みる」

綺麗な女ほど、平気で嘘をつく。

天野千尋は眩しいくらいに笑っているのに、目の奥の算段が露骨すぎた。

中村景は筋金入...

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