第294章

終わったあと、榎田神也はひどく優しく彼女を腕の中へ抱き込み、顎を指先で持ち上げた。艶を含んだ声で囁く。

「言え。俺を愛してるって」

ぼんやりとした篠崎アエミは、その声に反応するだけの力で、かすかに首を横に振った。

頭上で、嘲るような声が落ちてくる。

けれどアエミは構う余裕もなく、そのまま深く眠りへ沈んだ。

次に目を開けたとき、見慣れた部屋が目に入って、なぜだか隔世の感覚に襲われる。

ここは、二人の新居だった。

出て行ってから一度も戻っていないのに、室内の飾りつけは当時のまま。彼女の私物が消えている以外は、ベランダの薔薇でさえ変わっていなかった。

起き上がろうともがいた、そのと...

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