第306章

「そうよ。あんた、わたしのこと冷酷で薄情だって言ったじゃない。ずっとこうだったし。次、助けたくないなら帰れば? わたしだって相手を替えられる」

「替える……だと?」

歯ぎしり混じりの声。ひやりとした冷気を含んでいる。

榎田神也の整った顔が、底なしに陰る。彼は篠崎アエミの左手を乱暴に掴み上げた。

「今の、もう一回言え」

男の体躯が影となって覆いかぶさる。

危険な気配が肌を刺した。

篠崎アエミは怯まない。凪いだ顔で言い切る。

「なに、ダメ? あんたもわたしも今は独り身でしょ。最近は若い男の子が流行りだって聞くし、試してみようかなって」

「……試す?」

榎田神也がさらに詰め寄る...

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