第307章

個室の中。

大きな扉は開け放たれていた。

榎田神也がソファからよろよろと起き上がり、振り返りもせず個室を出ていくのを見送る。

「……」

その行動力があるなら、何をやっても上手くいくだろうに。

ただ――

「お会計になります……」

中村景は目を見開いた。

「もう一回言ってみろ。これが、会計?」

「はい」

店員は深々と頭を下げる。

中村景のこめかみがピクピクと跳ねた。視線が、テーブルの空き瓶へ落ちる。

一本だけでも――。

どれもこれも、最高級の酒じゃないか……。

支払いを終えた彼は、泣き顔より酷い表情のままバーを出た。

タフルグループ。

会議室。

新体制の空気が、...

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