第310章

拒む言葉は喉元まで出かかった。けれど、それは幾重にも降り注ぐ口づけに、あっけなく飲み込まれていく。

熱い吐息が頬をくすぐり、男の濃い匂いが彼女を逃げ場なく包み込んだ。大きな影が覆いかぶさる。

篠崎アエミは抗う間もなく、赤い唇を塞がれる。器用な舌が隙を突いて入り込み、彼女の舌にねっとり絡みついた。

甘く、執拗なキス。

頭の中が真っ白になり、考える力が奪われていく。頬は熱を帯び、瞳はとろんと潤み、頬の赤みだけが増していった。濡れた髪が艶めいた顔に張りつき、いっそう妖しく見える。

榎田神也は喉を鳴らし、彼女の蕩けた表情に目を細める。唇を耳朶へ落とし、そのまま首筋へ、鎖骨へと滑らせた。ちゅ...

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