第311章

篠崎アエミは腕を持ち上げ、そのまま平手で叩きつけようとした。

振り下ろす、その瞬間――手は宙で止まる。

口元がふっとつり上がった。ほんの一拍置いて、彼女はスマホを取り上げると、ついでとばかりに男の大きな手をつかみ、指を勝手に押し当てて指紋認証を解除した。

泥棒猫。

クズ。

その文字を目にした途端、胸の奥で怒りがごうごう燃え上がる。

アエミは目を細め、わざと甘えるように榎田神也の胸に身を預けた。そしてカメラを起動する。

カシャ、カシャ、カシャ。

一気に何枚も撮った。上半身裸の榎田神也と、肌を寄せ合うように写る親密な写真。

写真の中の榎田神也は、割れた腹筋がくっきり浮いている。...

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