第312章

陽光の射し込む中――

病室には艶めいた空気が漂っていた。

篠崎アエミは脇でその甘ったるさをまともに浴び、思わず咳払いでもして空気を変えたくなった、そのとき。

安和博人が入ってきた。

「入院したって聞いた。見舞いに来たんだ」

テーブルに置かれたのは、艶やかなバラの花束。ふわりと香りが広がる。

林田涼子は彼の姿を見るなり、鼻で笑った。

「何しに来たの。妹のために、こっちに『仲良くして』って言いに来たわけ?」

皮肉が、口をついて出る。目の嘲りも隠そうとしない。

松岡正恭は胸の奥を針で刺されたように痛め、顔を強張らせたまま言う。

「今日は用があって来ました。妹と友達になってほしく...

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