第315章

深夜。物音ひとつしない。

頭がぼんやりする篠崎アエミの身体が、ずしりと沈んだ。

目を開ける。

酒臭い榎田神也が、彼女の肩に手を置いていた。ねじ伏せるような視線で。

「……何してるんだ」

篠崎アエミが慌てて目を泳がせた、その瞬間。

榎田神也のキスが、雨粒みたいに容赦なく降ってきた。荒々しく、息継ぎの隙すら与えない。嵐みたいな口づけ。抵抗など最初から許されていない。

抵抗できない。どうしようもなく。

両手を胸の前に突き出し、押し返そうとする。

けれど男の胸板は、まるで鉄の壁だ。びくともしない。

「や……」

紅い唇が、乱暴に噛まれる。

榎田神也の目は赤く濁り、怒り狂った獣み...

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