第62章

「私の正体を、最初から知っていたんですか!」

 荒い息を吐きながら、しばらくして篠崎アエミは掠れた声で問い詰めた。

 榎田神也は顔を上げ、その深邃な瞳で彼女をじっと見据える。

「さあ、どうだろうな」

「この数日間、私を弄んでいたんですね!」

「ああ」

 男は彼女の耳元に顔を寄せ、魅惑的な声で囁く。

「たっぷりと楽しませてもらった」

 楽しむ。

 その言葉の響きには、明らかな侮蔑と嗜虐が含まれていた。

 篠崎アエミは怒りで顔を真っ赤に染める。

「……私たちがもうすぐ離婚すること、忘れないでください」

「離婚?」

 語尾を上げ、榎田神也は彼女の髪を指で弄びながら、もう片...

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