第77章

微風が吹き抜ける。

女性の艶やかな髪が、風に乗ってふわりと舞った。

あわや、風が『無憂』の帽子を攫うかと思われたその瞬間――彼女は素早く手を伸ばし、帽子をしっかりと押さえた。

ライブ配信のコメント欄には、視聴者たちの落胆の声が溢れかえる。

「風よ、もっと強く吹け! 二人が見つめ合うところが見たいんだ!」

「さっきの絵面、最高に尊かった……男のあの深く優しい眼差し。なのに、彼女の目が見えないなんて!」

ネットユーザーたちが大いに失望する中、ディレクターもまた同じ思いだった。

彼は即座にカメラマンへ指示を飛ばす。榎田神也と篠崎アエミ、この二人の動向を一秒たりとも逃すな、と。

カメ...

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