第92章

ファッションデザイナーとして、観客に愛されることこそが至上の幸福だ。

急遽、代役として招集されたモデルたち。

どこにでもいそうな平凡な容姿。だが、それこそが人々の日常に寄り添っている証左だ。

幸せそうな親子三人がランウェイを一周する。篠崎アエミも登壇し、彼らと共に観客へ謝辞を述べた。

ショーが終わり、篠崎アエミはマイクを握る。

「皆さん、こんにちは。なぜ私がこのモデルたちを選んだのか、疑問に思われているかもしれませんね。私は皆さんに、ごく普通の幸せをお見せしたかったのです」

彼女の声は優しく、しかし確固たる意志に満ちていた。

幸福とは、豪邸や高級車のことではない。

お互いを理...

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