第98章

パーティーがお開きになった。

篠崎アエミは泥のように疲れ切っており、一歩たりとも動きたくなかった。

「お願い、タクシーを呼ぶわ。貴方は車で帰って。送ってもらうのは悪いもの」

「分かった。でも……」

篠崎アエミが岩田延一に頼むべきか迷っていると、一台の車が目の前に滑り込んできた。

ウィンドウが下りると、眼鏡をかけた比類なき美男子が、その瞳に笑みを湛えてこちらを見ていた。

「乗りなよ、送っていく」

「……ええ、お願い。それじゃあ、貴方も気をつけて帰ってね」

篠崎アエミは旧友に遠慮することなく、軽く挨拶を済ませるとドアを開けて乗り込んだ。

エンジンが唸りを上げ、車は放たれた矢のよ...

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