第99章

「なんでもありません。一分待ってください、すぐ出ますから!」

 逃げられない以上、向き合うしかない。篠崎アエミは手にした衣服に視線を落とした。着ないよりはマシだが、しかし……。

 ふと視界の端にバスタオルが映り、妙案が浮かんだ。

 ドアが開く。

 榎田神也は反射的に視線を向け、その瞳に微かな愉悦の色を浮かべた。

 湯上がりの体からはボディソープの甘い香りが漂い、白磁のような滑らかな肌が露わになっている。

 半乾きの髪が無造作に散らばり、その表情はどこか気怠げで艶めかしい。だが同時に、傷ついた仔鹿のように怯えた不自然さが滲んでいた。

 彼は眉を挑発的に跳ね上げ、ゆっくりと歩み出る...

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