第15章 私を困らせないで

久しぶりの再会で、葉田知世と橘直人は喫茶店で旧交を温めていた。

「お前の家のことは、帰国後すべて聞いた。ずっとお前を探していたんだ」橘直人は単刀直入に切り出した。

「うん」

葉田知世の母親の自殺はもともと秘密ではなかったので、彼が知っていても不思議ではなかった。

彼女は自分にエスプレッソを注文し、橘直人には彼の好きなカフェラテを頼んだ。

「半年ぶりだが、お前は随分変わったな。コーヒーの好みだけは変わってないようだが」

橘直人は、彼女が30ミリリットルの濃厚で溶けきらないコーヒー液を一口で飲み干す様子を見て、まるで自分がその苦味を感じたかのように、思わず眉をしかめた。

「わたし、...

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