第43章

藤原羽里は葉田知世が以前と違うことに気づき、心持ちが随分と晴れやかになった。

しかし、表向きはそっけなく返事をするだけだった。「結婚するさ」

「じゃあ、今から婚姻届を出しに行きましょう」

葉田知世が洗面台から降りようとしたが、藤原羽里はもう弓の弦が引き絞られた状態で、彼女を逃がすわけにはいかなかった。

神のみぞ知る、この一ヶ月間どれほど我慢してきたことか!

二人は朝から昼までずっと戯れ、ようやく身支度を整えて区役所に向かったときには、もう正午近くの11時だった。

急いで区役所の閉庁時間前に証明写真を撮り、婚姻届を提出し、全ての手続きを終えて、あの特別な意味を持つ赤い表紙の婚姻届受...

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